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執筆者の写真Akiko Yoshida

【日本の再生可能エネルギー & 再生可能エネルギーの選び方】“でんき”を選んで未来を変えよう!パワーシフト・キャンペーン

更新日:2021年11月2日

おうちの電気は、どんな電気?


あなたのおうちの電気は、どんな電力会社から買っていますか?その電気は、どこでどんなふうに作られているでしょうか? 2016年の4月から、一般家庭で使う電気も、さまざまな電力会社(小売の電力会社)から選んで買うことができるようになりました。形も色もなく、目に見えないので、普段はほとんど意識することがない電気ですが、その裏には様々なストーリーがあるのです。


以前は、地域の大手電力会社(東京電力や関西電力など)が発電から送配電(電気を送る)、小売(電気を売る)まですべてを担っていました。電力会社を選ぶ選択肢がなかったのです。2000年、2005年と部分的な自由化によって新電力(大手以外の小売電力会社)の参入が少しだけ始まりました。大規模なビルや公共施設などは新電力から電気を買えるようになっていましたが、一般家庭への電気の販売は、地域の大手電力会社のみが行っていました。


それが大きく変わったのが2016年です。みなさんも、テレビCMや電車広告、もしくは携帯電話の切り替えをするときなどに、「電気も切り替えませんか」「まとめてお得」というような宣伝を見たことがあると思います。


新しい電線を引くのかな、と疑問に思うかもしれませんが、実は電気の物理的な流れはこれまでとまったく変わらないのです。送電線を管理運営し、おうちまで電気を届ける「送配電」の仕事は、今も大手電力会社が担っています。自由化で参入した新電力(電気の小売会社)とは、お客さんとの手続き的な窓口業務を行う会社なのです。極端に言えばパソコンがあればできるので、一見関係のなさそうなさまざまな業種や自治体なども、参入しているのです。

再生可能エネルギー重視の電力会社とは


その中で、再生可能エネルギー(再エネ)を重視する新電力も多数出てきています。電気の物理的な流れは変わりませんが、電気をどこから買ってくるのか、また電気料金の利益の一部がどう使われるのかが違ってきます。具体的にどんな電力会社があるのか、タイプ別に見ていきましょう。


<生協系の電力会社>

生協(生活協同組合)は、消費者が組合員となり、食品や日用品などを共同購入するしくみです。産地や原材料にこだわった商品選択が重視されています。そんな生協だからこそ、脱原発やエネルギーシフトの取り組みも以前から行い、それぞれに再エネを重視した電力会社を立ち上げています。

組合員の参加で建設した再エネや、食品の産地に関連する再エネ、市民の再エネからの調達が重視されています。また、再エネやFIT電気(再生可能エネルギー固定価格買取制度によって支援された再エネの電気)の割合が高く、電源構成や電源の開示が積極的に行われているのも特徴です。「再エネ重視プラン」と「安さ重視プラン」とがある場合は、再エネ重視プランを選びましょう。


<自治体新電力>

自治体が出資するなどして関与する「自治体新電力」も各地に生まれ、現在約40ヵ所あります。地域の再エネを活かしているか、今後増やしていく計画を持っているか、また再エネや自治体新電力事業について、地域の計画の中にきちんと位置づけているか、などがポイントです。電気料金の一部を高齢者見守りや子育て支援など地域のサポートや活性化に生かす取り組みも今後注目です。


<民間のさまざまな電力会社>

地元のガス会社や太陽光発電の会社などが立ち上げた民間の会社で、自治体が関与していなくても地域にフォーカスした電力会社も多数あります。地域の小規模太陽光発電や家庭の屋根の太陽光など地域の電源を買い取って販売しているところがポイントです。

ほかにも、地域や市民主体の再エネを重視する電力会社や、電気代の一部でNGOや福祉、地域活動などを支援する電力会社など、ユニークな取り組みが多数あります。


電力会社の選び方、切り替え方


再エネ重視の電力会社といっても各社目指す方向や特徴は本当にそれぞれです。2015年から環境NGOなどが行う「パワーシフト・キャンペーン」では、以下のような電力会社を紹介し、消費者の選択を呼びかけています。

1.「持続可能な再エネ社会への転換」という理念がある

2.電源構成などの情報開示をしている

3.再生可能エネルギーを中心として電源調達する

4.調達する再生可能エネルギーは持続可能性のあるものであること

5.地域や市民によるエネルギーを重視している

6.原子力発電や石炭火力発電は使わない

7.大手電力会社の子会社などではないこと


応援したいと思うポイントやエピソードを見つけるつもりで、選んでみてください。

パワーシフト・キャンペーンのウェブサイトでは、電力事業を始めたきっかけや社長の思い、苦労していること、目指す方向など、各社のウェブサイトに載っていないことも掲載しています。


応援したい会社が決まったら、申込み手続き自体はとても簡単です。各社のウェブサイトから連絡先などを入力するだけ。その際に必要なのは、現在の請求書の「お客様番号・地点番号」です。申込先の電力会社が契約移行(スイッチング)手続きを行うため、今までの電力会社に「解約」の連絡は必要ありません。その意味では、携帯電話の変更などよりもずっと簡単です。マンションやアパートに住んでいても、建物一括の契約でない限り切り替えられます。


お金の流れを変えよう!―再エネの電気を選ぶ意味

電気を選ぶことは、未来を選ぶこと。投票と同じくらい効力があります。なぜなら、電気代というお金の流れを変えることができるからです。電力市場全体で約15兆円、そのうち約7.5兆円が家庭部門です。2016年以前はすべて大手電力会社に行っていたこのお金の使われ方を、私たち自身が決めることができるのです。切り替えたみなさんの感想は「気分がすっきりした」「再エネにつながる安心感がある」などなど。自分が支払う電気代がどう使われるかで、違うのです。


一方、電力自由化はよいことばかりではありません。価格競争が起こるということは、各社ともいかに経費を抑えるか、電気を安く仕入れるか、厳しい検討を迫られます。そのため、燃料を安く調達できる石炭火力発電の建設・稼働が2012年以降大きく進んでしまいましたし、古い原発を再稼働して長く使おうということにもなってしまっています。エネルギー政策を変える働きかけをすると同時に、消費者としても再生可能エネルギーを積極的に選択することが不可欠です。


最後に重要なのが、エネルギー問題や気候変動問題は、決してそれだけでは語れないということ。地域のこと、社会のこと、食べ物のこと、生き方のこと・・つながる人々の思いや取り組みを共有していくことこそ、今後再エネ選択を広げていくうえでの鍵となるでしょう。


パワーシフトキャンペーン紹介電力会社


全国のパワーシフトキャンペーン紹介電力会社はこちらの地図からご覧いただけます。

(パワーシフト・キャンペーンのウェブサイトより)


 

著者について


吉田明子

パワーシフト・キャンペーン代表


国際環境NGO FoE Japanで気候変動・エネルギー政策を担当。3・11後にできたネットワーク「eシフト」の事務局など、エネルギー政策に市民の声を届ける観点で活動する。


2015年に、市民のちからで再エネ選択を広げるために、複数の環境団体などで「パワーシフト・キャンペーン」を立ち上げる。


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